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2024年 1月30日
地域再生 新しい価値を 地方各紙の元日付紙面

平和に向け何をすべきか

 地方紙の元日付社説・論説は、人口減少をテーマにしたものが多かった。地方で危機感が高まっており、読者に処方箋を提案したり共に対策を考えていこうと呼び掛けたりした。ロシアによるウクライナ侵攻やパレスチナ自治区ガザ地区での戦闘は出口が見えず、日本でも防衛力の強化が進められている。こうした国際情勢を念頭に、平和をテーマにしたものも少なくなかった。昨年末に急浮上した「政治とカネ」を巡る問題に言及した社も複数あった。

人口縮小社会 克服の道探る

 国立社会保障・人口問題研究所は昨年12月22日に公表した地域別将来推計人口の中で、2050年の人口は20年と比べ東京都を除く全道府県で減少するとした。

 山形は50年に県の人口が33.4%減少するとの同推計を引用。「人口が減る中でも地域の活力を維持していくためには産学官が一体となって『オール山形』で難局を乗り越えていく必要があろう」とした。その上で、県内の大学が地域と積極的に関わろうとする姿勢を「明るい動き」として紹介した。秋田魁は「たとえ地域は縮んでも、地域社会を持続していく気概をなくしてはならない。まず、住民が地域での暮らしの魅力や価値を見いだすことだ。そうした気付きを、国の研究機関の推計とは異なる秋田の未来を開くための手掛かりとしたい」と訴えた。

 福島民報は「人口縮小社会を克服できる潜在力は地方にこそあるとの思いを深め、女性も、男性も、子どもも、高齢者も、県内すべての人たちが輝ける県づくりをこの一年、みんなで追い求めたい」と呼び掛けた。

 山陽は「地方からもっと大きく声を上げる必要があろう」と主張。「地方の衰退により、政策決定に携わる中央官僚も東京圏出身者が増え、地方への理解が進まない問題が指摘される。国会議員も人口比で大都会の選出が増えてきた。このままでは打開の糸口は見えない」との危機感を示した。

 県面積の約9割を占める中山間地域に焦点を当てた宮崎日日は「自然と共に生きる暮らしと、そこで培われてきた精神性に改めて注目してもらいたい。利己主義や効率優先がはびこる現代社会においていま一度、見直されるべき財産」と評価。「それぞれの地域の個性と可能性を掘り起こし、地域再生策に磨きをかけよう。『地方消滅』という圧力に県民総意であらがおう」と論じた。

 岩手日報は「今後勢いを増すであろう人口の急降下。つい身構えたくなるが、変化を受け止めるしなやかさが鍵を握る。古里への希望を決して手放さず、未来を照らしたい」とした。信濃毎日も「人口減少の時代にこれまで通りの手法は通用しない。そう腹をくくる必要がありそうだ」と心構えを説いた。

 東奥は「県民一人一人が人口減少を暮らしに直結する課題と捉え、経験や知識に根ざして知恵を出し合いたい。それが持続可能な地域社会の基盤になる」とした。

 佐賀は国民スポーツ大会と全国障害者スポーツ大会が開催されることから、「人口が減り続ける社会の中で縮こまらず、活力のある地域づくりをどう進めていけばいいのか。大きなイベントに過剰な期待をかけるのは難しい状況かもしれないが、そうであっても国スポ、全障スポに向けて県民の力を集め、地域づくりに対する熱を高めたい」と提案した。

 厳しい国際情勢の中で、「平和」への願いを新たにした社も多かった。

 岐阜は「希望に満ちた晴れやかさとはほど遠い現実が世界を包み込んでいる」と書き出した上で、「平和国家の理念と民主主義を根付かせた戦後の時間は誇るに値する。日本が果たす非戦の役割はどんな政権でも変わらない。これまで歩んできた道を信じ、次の時代への扉を開く年にしたい」と表明した。中国は「世界の強国のエゴがむき出しになった戦禍を一日も早く終わらせることを指導者たちに強く求める」と主張。一方、「日本にいる私たちは連日、死者の数が伝えられても慣れっこになっていないか」と自戒を込めた。

 河北は「歴史の転換期という古く新しい言葉が、掛け値なしに迫ってくる年になろう。地球に適応し、世界が共存するために、国際社会や私たちは何をすべきか、見つめ直したい。ありきたりかもしれない。誰もが夢を見られる平和な世界、平穏な社会の実現をと、年頭に切に願う」と結んだ。

 愛媛は核兵器使用への危機感を強調した。「核が二度と使用されてはならない。そのために『被爆者の同志』の立場を堅持し、正当な想像力を持ち続けたい」と訴えた。

 政府は九州・沖縄で台湾有事への備えを急いでいる。

 南日本は「鹿児島県内では、防衛関連施設の整備や部隊の受け入れが進んでいます。有事の際、こうした軍事施設が真っ先に敵の攻撃目標になる懸念は消えません」とした上で、「米軍と一体化することで、相手に攻撃を思いとどまらせるという政策が、日本の唯一の選択肢なのでしょうか」と問い掛けた。琉球も「沖縄の島々で急速に進む軍備強化は平和で豊かな県民生活を壊すものだ。戦争準備とも言うべき危険な動きに歯止めをかけなければならない」と強調した。

 沖縄の基地問題は解決の兆しが見えない。沖タイは「少数者への押し付けを当然視する差別的な政策はもはや限界だ。基地政策がターニング・ポイントにきているのは明らかである」と怒りをにじませた。「命を育むかけがえのない海を、次代の子どもたちに引き継いでいくことこそ優先されるべきである」と主張した。

自民裏金巡り「罰則強化必要」

 昨年末に自民党の派閥を舞台にした「政治とカネ」の問題が浮上し、政治不信が高まった。神奈川は「間違いなく政治史に刻まれるであろう自民党裏金事件は、権力中枢に長く巣くってきた暗部をさらけ出しています」と指摘した。

 静岡は「リクルート事件をきっかけに1990年代に進めた政治改革で、企業・団体献金の受け皿は政党に限定したはずだが、実際は政党支部やパーティーを抜け道にしてずさんな扱いが横行していた。全面禁止に向け、すぐにでも議論を始めるべきだ。今回、発覚した政治資金収支報告書の不記載や虚偽記載については、罰則を強化して徹底するしかなかろう。政治資金規正法の抜本改正が不可欠だ」と断じた。

 政治家への注文もあった。茨城は「いま政治家に求められるのは困難な時代を乗り切る信念を持って政策を国民や議会に丁寧に説明して、議論を深めることだ。『政治とカネ』を巡る古くて新しい問題や不祥事も相次ぐ。政治家の真価が問われている。有権者も政治家の劣化を嘆くだけではなく、選挙で評価を下したい」とした。山陰中央はかつて自民党の派閥を率いた3人の地元選出議員の足跡を紹介した上で、「派閥を巡る『政治とカネ』で揺れる今だからこそ、新しい力で山陰から政治を改革したい」と呼び掛けた。

ニュース15紙、企画・連載56紙

 【1面トップ】15紙がニュース、38紙が企画、18紙が連載でスタートした。ニュースと連載の主な見出しを拾う。

 《ニュース》信濃毎日「軽井沢の学習放獣で被害抑制傾向 人間の怖さ学ぶ 母熊から子熊へ 行動変化 共存の道探る」、中日「過徴収 愛知1億円超 『恵』ホーム 自治体調査 食材費 返金始める」、熊本日日「空港鉄道に中間駅 大津町が検討 白川北側、高架橋上か 商業施設、宅地開発の構想も」、南日本「暗文土師器 県内初確認 飛鳥期、畿内地域の影響示す 指宿・尾長谷迫遺跡 大和政権との関係明示か」。

 《1面連載》秋田魁「地方創生 失われた10年とこれから」、山形「異変 生態系クライシス 南極から」、茨城「いばらき 減少時代を生きる」、山梨日日「働き方 新流儀」、新潟「誰のための原発か 新潟から問う」、山陰中央「学びの変革~人口減少時代の教育」、徳島「神々の肖像 とくしまの祭り」、宮崎日日「縮小社会 宮崎の未来図」。(審査室)

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