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2024年 4月9日
安保政策転換 議論を喚起 次期戦闘機の輸出解禁

「歯止め策」への懸念相次ぐ

 政府は3月26日、日本が英国、イタリアと共同開発する次期戦闘機に関し防衛装備移転三原則を改定し、第三国への輸出を解禁した。与党に対してはこれに先立ち、輸出は閣議決定を条件とし、装備移転協定締結国に限定するなどの「歯止め策」を提示、合意を得ていた。各紙の社説・論説では、装備品輸出自体への是非に加え、与党合意や閣議決定の過程、次期戦闘機に限定した決定についてさまざまな指摘・論考がみられた。

 琉球は輸出解禁について「国民の理解は十分とは言えない。何よりも平和国家の国益に反する」とした上で、「恒久平和を願い、国際社会で名誉ある地位を占めると誓った平和国家の理念を戦闘機輸出によって形骸化させてはならない」と批判。北海道も「政府・与党内からは、平和主義の理念をどう守るかについて、まともな憲法論議がほとんど聞こえてこなかった」として、昨年の輸出解釈変更についても「過去に積み上げてきた原則をないがしろにする暴論だ」と断じた。朝日も「国際紛争を助長する武器の輸出国にはならないという原則の一層の空洞化は避けられない」との見方を示した。

 一方、日経は「日本のあるべき安全保障の姿を国民的議論に発展させる契機としたい」とした。さらに「武器輸出に抑制的だった基本方針の転換となるが、日本をとりまく厳しい安全保障の現実を直視すれば理解できる」と説いた。産経は、輸出先ごとに閣議決定する手順について「次期戦闘機に限らず一般的な原則として輸出解禁に踏み切るべきだった。煩雑な手続きを嫌って日本との共同開発をためらう国が現れれば、日本の平和と国益が損なわれる」と歯止め策に疑問を呈した。

国会関与せぬ決定批判

 輸出決定や、今回の政策転換に国会が関与しないことについては厳しい注文が相次いだ。

 神戸は「見過ごせないのは、輸出手続きに国会が関与する機会がないことだ。これまでも自公政権は、反撃能力(敵基地攻撃能力)の保有など賛否が分かれる安保政策の転換を与党協議と閣議決定で推し進めてきた。国民の疑念や不安に向き合わない閣議決定では、何回重ねても『厳格な歯止め』にはなり得ない」とし、秋田魁も「国会審議を経ずに決まるのでは、なし崩し的に輸出が拡大する懸念が拭えない」と訴えた。

 信濃毎日は「『厳格な手順』に国会の承認は含まれていない。いまは15カ国の協定締結国も、輸出を前提に増やすことができる」と、歯止め策の実効性に懸念を示した上で、「岸田政権は外交構想には言及せず、日本を変質させる防衛力強化に躍起になっている。説明も議論もない国民不在の『密室合意』を認めるわけにはいかない」と戒めた。

 日本の安保環境への影響について、読売は「これまでの方針を見直さなければ、日本は英伊両国に技術を提供するだけで、共同開発のメリットを得られなくなる可能性があった。国際社会から、日本は制約の多い国だとみなされれば、様々な装備品の共同開発に参画しにくくなっただろう」と指摘。北國も「共同開発は各国の技術を生かし、数兆円とみられる開発コストを低減するためである。日英伊だけの配備では300機程度の製造にとどまるとされ、輸出による量産化が必要だ」とした。

国際紛争助長の恐れも

 岩手日報は「もし輸出先を通じて戦闘機が紛争に使われれば、平和国家としての日本の信用が揺らいだり、わが国を取り巻く安保環境に影響が出る恐れもあろう」と警鐘を鳴らす。河北も「輸出先の国の対応を監視・確認する手段はあるのか。それができなければ、憲法が禁じる他国の武力行使との一体化となる恐れは消えない」と懸念を示した。毎日は「憲法9条に抵触しかねない。国際紛争を助長する恐れもある」と指摘した。

 また、次期戦闘機の共同開発決定時に第三国輸出は想定されていなかったとする首相答弁について、東奥、茨城、上毛、岐阜、山陰中央、大分合同などは「この答弁は信じ難い。共同開発の交渉段階で当然、議題になっていたはずだ。詰めを怠ったとすれば政府の失策であり、意図的に隠していたならば国民への背信行為だ」と批判。山梨日日も「相手国に求められたからと政府与党で決めた前提を簡単に変えるなら、今後も『後付け』でさまざまな変更がされかねない」と、厳しい目を向けた。

 熊本日日は国際情勢の変化に応じ、国際共同開発や防衛装備品の輸出など安保政策を見直すべきとの意見も根強いと説明。その上で「平和国家のあり方を巡る議論は、国民に開かれた場所でなされなければならない。閣議ではなく国会で、議論を重ねる必要はないか」と訴えた。中日・東京は「国会はもとより国民的な議論を尽くさねばなるまい」と強調した。(審査室)

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