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2025年 4月22日
人権意識の低さ指摘 フジ問題巡る調査報告書公表

「構造的課題」 重く受け止めよ

 フジテレビの一連の問題で、第三者委員会が3月末に調査報告書を公表し、フジ社内の人権意識の低さや企業統治の不全が改めて明らかになった。公共性の高い放送メディアとしての責任、日本企業一般に通じる普遍的な教訓などの論点を各社の社説が取り上げた。

 報告書は、元タレント・中居正広氏による女性アナウンサーへの性暴力が「業務の延長線上」で起きたと認定。その後もフジは同氏を番組に出演させ続けたほか、同氏の依頼で女性に100万円を渡そうとしたうえ、弁護士を紹介していた。女性は心的外傷後ストレス障害(PTSD)を発症。報告書は「女性への二次加害行為に評価し得る」とした。中日・東京は「社員を守らないばかりか、実質的に加害者を支援していたのであれば組織ぐるみで性加害に加担したと批判されても否定できまい」と批判した。

企業統治の不全解消を

 報告書は、フジが有力取引先と良好な関係を築くため、会合で若いアナウンサーや社員を利用していたことや、社員が後輩女性にセクハラをしても処分がなく、役員に昇格して報道番組キャスターとして出演していた事例も挙げ、「セクハラに非常に寛容な企業体質」と切り込んだ。

 毎日は「『性別・年齢・容姿』などで社員らを選び、取引先との接待要員に充てる慣行がはびこっていたのはあきれるほかない」と指摘。「メディア・エンターテインメント業界における構造的な課題」だとの報告書の指摘を業界全体が重く受け止めるべきだと結んだ。京都は、旧ジャニーズ事務所創業者の性暴力でも、「放送局の見て見ぬふり、人権意識の欠如が問題になった」と指摘。「芸能界とメディアの関係正常化へ業界の取り組みも問われる」と訴えた。

 ガバナンス不全を取り上げた社も多かった。日経は、内部通報などの制度が十分に機能せず、被害の拡大を招いたとする報告書を引用し、「法令順守体制の強化や社員研修の拡充といった対策」は「始まりにすぎない。徹底した実行が伴わなければ絵に描いた餅に終わると自覚すべきだ」と主張した。産経も「着実な実施と不断の見直しが欠かせない」とした。

 フジは報告書を待たず、取締役を40年以上にわたり務めた日枝久氏を含む取締役を入れ替える人事をおこなった。清水賢治社長はその公表時、第三者委が出す結果と経営の刷新は別の観点のものだと述べていた。朝日は「事件に深く向き合わずに、刷新ができるのか」と疑問視。「人権意識の改善に貢献する能力をもつ役員を選べたのか。決定過程も報告書が求める水準に比べ不透明だ」と訴えた。

 中国は「フジ側には第三者委報告を区切りに、離れたままのスポンサー対策を進めたい思惑があるはずだ」と指摘しつつ、「報告書を読む限り、信頼回復を図るなど程遠い段階だと感じざるを得ない」と批判した。岩手日報も「多くのスポンサー企業が差し止め中のCM再開に慎重なのも当然で、今後の経営において影響が深刻化する恐れもあろう」と述べた。

 フジは1980年代、娯楽番組やトレンディードラマで視聴者に支持された。その中に日枝氏も、今回の事態を「プライベートな男女間のトラブル」と即断した港浩一前社長もいた。読売は「過去の成功体験から人気タレント頼みの路線にこだわるあまり、法令順守が重視される今の時代から取り残されたのではないか」と指摘。報告書で「組織風土の醸成に与えた影響も大きい」とされた日枝氏が、一言も発せず表舞台から去ったため、説明責任を果たすべきだと求めた。

 東奥や岐阜、日本海などは「改革は被害者の痛みへの共感からしか始められない。フジは被害女性の声に耳を傾け、心から謝罪してほしい」としつつ、他のメディア企業も同様のことが起きていないか、総点検すべきだと迫った。

労働の現場 省みる機会に

 西日本は「テレビ局の社会的責任も自覚する必要がある。組織の人権意識は報道や番組などのコンテンツに反映される。視聴者に与える影響は大きい」と指摘。信濃毎日も「女性を見た目や年齢で評価し、ハラスメントにも見て見ぬふり―。これはフジだけの問題なのか。一人一人が働く場を省みる機会としたい」と指摘した。

 報告書は、メディアだけでなく、一般企業にも参考になる内容を多く含む。北海道は「経営陣に女性登用が進まず、男性中心的な価値観が根強く残るのはメディア企業に限った話ではない。日本企業全体に多様性の尊重やハラスメント根絶の課題が突きつけられている」と触れた。琉球も「性差を巡って不利益を被るような状況がないか、ハラスメント発生時の対応はどうか、倫理規定や窓口を設けていたとしてもそれが機能するのか。さまざまな論点で労働環境を見直してみる必要性を突きつけてもいる」と結んだ。(審査室)

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