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2025年 5月13日
「輝く未来社会」描く機会に 大阪・関西万博が開幕

国際社会再構築に向け交流を

 「いのち輝く未来社会のデザイン」をテーマに掲げる大阪・関西万博が4月13日に開幕した。初日は約11万9000人が訪れた。開幕前後の各紙社説は、紛争や世界経済の不透明感が強まる中、未来につながる期待を表明したものが多かった。来場者の安全確保など運営に対する注文も多く見られた。

地域の復興巡る発信重要

 地域の事情をふまえ、万博に意義を見いだす声が目立った。岩手日報は、大阪市の人工島・夢洲について、東日本大震災で発生した岩手県のがれきを受け入れ、焼却灰を埋め立てた場所でもあるとしたうえで「復興の感謝を伝えると同時に、世界に資する最先端技術の発信と情報共有につなげたい」と記した。福島県は7月に県単独のブースを出展し、震災と原発事故からの復興状況を伝え、県の魅力やモモなどの農産物をPRする。福島民友は「県や復興庁などには、海外からの来場者などの関心を高める取り組みに力を入れてほしい」と要望した。

 九州7県は「九州の宝を世界へ」をテーマに合同出展する。熊本県は阿蘇の草原を再生する取り組みをアピールし、阿蘇の世界文化遺産登録の機運を高める。熊本日日は、南小国町が万博会場で特産の杉を使ったゲームを紹介するとともに、町内の小中学生を派遣することを伝え、「世界を見つめる貴重な体験になろう」と期待した。

 宇部は「初日は大勢の入場者で混乱もみられたが『行ってみるべし』と勧める価値は十分にあると感じた」という。「ボランティアや警備員はイライラ気味の問い合わせにも誰もが笑顔で答えていた」ことに触れ、「混乱の中のもてなしの心がまぶしい」と記した。

 山陰中央は「大阪に比較的近い山陰両県にとっては、インバウンド(訪日客)を中心に多くの観光客を呼び込む好機」だと書く。北國は「訪日旅行客がさらに増えるのは間違いない。経済波及効果をうまく取り込み、北陸の魅力を高める好機にしたい」と希望した。

 日本農業は、日本人が一生に食べる鶏卵の数を視覚化した展示に言及し、「世界的に鶏卵が高騰する中での展示だけに、『食』にも負のイメージがつきまとう。そうしたイメージを乗り越え、どのように『輝く未来社会』へつなげるか。来場者に夢を、農業の未来にワクワク感をもたらす万博であってほしい」と願った。

災害時 確実な避難策を

 来場者の安全を求めた社も多い。毎日は、夢洲と本土を結ぶルートが橋とトンネルの二つしかないことに触れ、地震や台風などで「来場者が島内で孤立する恐れ」を指摘。愛媛も、南海トラフ巨大地震などが起きた際の対応が肝要だとし「多い日で22万人超を想定する来場者が確実に避難できるよう、万全を期す必要がある」と記した。

 開催までの経緯は決して順調ではなかった。夢洲は埋め立て後、活用が進まず「負の遺産」と呼ばれた。新都市構想や2008年五輪招致は頓挫し、地域政党・大阪維新の会が打ち出したのが、カジノを含む統合型リゾート(IR)と万博の招致だった。工期の遅れ、会場建設費の増額、海外パビリオンの減少、メタンガスによる工事中の爆発事故など、課題は噴出した。現在も万博会場の隣ではIRの建設工事が進む。中国は「人生を棒に振る人を生みかねない施設が万博の遺産にふさわしいのか」について考える必要性を強調した。

 1970年の大阪万博や2005年の愛知万博を振り返り、歴史を俯瞰した社もあった。朝日は「70年の大阪万博は、人類の明るい未来と発展を描いた。55年後の今回は、人口減少と高齢化で世界の先端を進む成熟国として、SDGs(持続可能な開発目標)を意識し、『いのち輝く未来社会のデザイン』をテーマに掲げる」と記した。読売は「前回の大阪万博は高度成長期の技術と進歩、愛知では環境問題と自然が主なテーマだった。今回は『いのち』を取り巻く課題が地球規模で多様化、深刻化している時代を反映したと言えるだろう」と書いた。

 ロシアのウクライナ侵攻やパレスチナ自治区ガザ地区での武力衝突などの中で開く万博は、何をもって成功と考えるべきか。神戸は紛争当事国が出展することに触れ「日本が尽力すべきは参加国同士の交流を促し、国際社会を再びつなぎ直すという無形のレガシーを築くことだ」とする。日経は「デジタルの時代だからこそ、人と人がリアルに語り合い、そこから創造されるものの貴さを再認識する。そんな万博になれば、開催した意味はあるだろう」と論じた。福井は「多様な才能や価値観が交わって次世代の人材を育み、さらに共存とはどうあるべきかを考える舞台としたい」と表明した。

 産経は「国を挙げて万博を盛り上げ、そこから得られる感動や学びを末永く記憶に刻める祭典としたい」と結んだ。(審査室)

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