1. トップページ
  2. 新聞協会報・紙面モニターから
  3. 右派的言動に不安と懸念 自民新総裁に高市氏

2025年 10月14日
右派的言動に不安と懸念 自民新総裁に高市氏

女性初の首相誕生に期待

 10月4日の自民党総裁選で、第104代総裁に高市早苗衆院議員が選出された。結党以来初の女性総裁であるとともに、中旬にも召集される臨時国会で憲政史上初の女性首相に就任する可能性がある。各紙は総裁選直後の5、6日付社説・論説で、高市氏に期待を示す一方、これまでの右派的な言動、赤字国債発行をいとわぬ財政政策などへの不安や懸念に行数を割いた。

排外主義の姿勢に危惧

 女性初の首相誕生について、日経は「男性が多い政界の『ガラスの天井』を破る意義は大きい」と強調し、「保守的な主張も目立つが、多様性に配慮し、各界で女性の活躍が広がるように努めてほしい」と期待を込めた。

 福島民友も「女性の政治家としてのこれまでの経験や教訓、新たな感性などを多くの政策に反映し、山積する課題の克服につなげてほしい」とエールを送った。

 一方、高市氏が総裁選中、排外主義と受け取られかねない発言をしたこともあり、多くの社が、これまでの言動も含めて、その右派的な思考や姿勢に危惧を示した。

 信濃毎日は「懸念されるのは、保守の立場から愛国心を強調するあまり、排外的な風潮を強めてしまわないかという点だ。総裁選でも外国人管理の厳格化を強調する場面があった。共生を支える政策を着実に進める視点を忘れてはならない」と注文を付けた。

 中国も同様に、「外国人が起こした問題なのか根拠が曖昧な主張を展開する場面があった。社会の分断をあおりかねない。さまざまな現場で外国人が働くのは日常の風景だ。政策の方向性を誤ってはならない」と主張した。

 琉球は「保守的な政治信条や歴史認識が、今後どのような形で政策や外交に影響を与えるのか不安がぬぐえない」とした。朝日は「高市氏はこれまで、閣僚在任中も終戦記念日の8月15日に靖国神社参拝を重ねてきた」としたうえで、「昨年の総裁選では、首相になっても参拝すると明言したが、今回は『適時適切に判断する』と明言を避けた。とりあえず波風を立てまいとしているだけではないのか」とけん制した。

 中日・東京は、「中国は政治体制が異なるとはいえ、日本にとって最大の貿易相手国だ。外交的対立を無用に高め、互いの経済に影響が出る事態は避けねばならない」とした。さらに、「石破氏が軌道に乗せた韓国との協力関係も冷え込ませてはならない」と強調した。

ポピュリズム政治にくぎ

 また、積極財政を掲げていることも不安視された。毎日は「懸念されるのは、ポピュリズム的な姿勢が強まることだ」とし、「野放図な財政膨張で、将来世代にツケを回すような政策は容認できない」と訴えた。

 派閥の政治資金問題に関係した議員の要職起用に前向きなことへも批判が相次いだ。南日本は「党役員や閣僚人事で旧安倍派を起用すれば、政治改革の本気度が国民に見透かされると自覚すべきだろう」と指摘。神戸も「信頼回復に不可欠なのが、衆参両院選大敗の原因となった派閥裏金事件に象徴される『政治とカネ』を巡る問題へのけじめだ」としたうえで、「裏金問題の実態解明や政治資金改革の不十分さを認め、抜本的な見直しに取り組むのが、新総裁に課せられた重い宿題である」と強調した。

 今回の総裁選決選投票で、唯一の派閥である麻生派の会長を務める麻生太郎元首相が高市氏当選の流れを作ったことへの懸念も出た。北海道は「重鎮が影響力を誇る旧態依然の姿が続くなら『解党的出直し』は遠い」とした。西日本は「高市氏が解党的出直しを実行するなら、派閥政治の名残を完全に断つべきだ」と訴えた。

 自民、公明両党の連立与党は現在、衆参両院で過半数を失っている状態で、高市氏は出だしから不安定な政権運営を強いられる。連立を急いで拡大すべきか否かで、各紙の見方は割れた。産経は「公明党との協力に加え、野党との関係構築が急がれる」と指摘し、「野党各党に党首会談を呼びかけ、連携していく党を見いだしてほしい」と訴えた。新潟も「野党との協議を早急にまとめ、予算案を成立させることが、政権を安定させるための第一関門となるだろう」とした。

 静岡は対照的に、「外交・安保、社会保障などの基本政策で方向性を一致させることが不可欠だ」とし、「拙速に結論を出せば、国民に『数合わせ』と受け取られ、政治不信を深めるだけだ」と説いた。山陽も「単なる数合わせでは国民の理解は得られまい。政権の目指す社会像や政策を明示することが不可欠だ」と主張した。

 読売は「連立入りの見返りに野党の要求を丸のみするだけでは、これまでと何ら変わりはない」と指摘。そのうえで、「給付や減税で国民の歓心を買うようなポピュリズム政治に陥ることは許されない」とくぎを刺した。(審査室)

ニュース&トピックス

ニュース&トピックス

ページの先頭へ