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2025年 11月11日
「多様でひとつ」 次世代に 大阪・関西万博が閉幕

レガシーの検証欠かせず

 大阪・関西万博が約半年の会期を終えて閉幕した。始まる前は巨額の建設費や準備の遅れ、前売り券の不人気などで批判を浴びたが、来場者は尻上がりに増え、運営費の収支は230億円以上の黒字を見込む。「そもそも万博は収益目的の事業ではない」(西日本)が、各紙の社説・論説は一定の成果をあげたとの見方が多かった。

低調予想覆す活況を評価

 「分断が進む世界への貴重なメッセージにもなったのではないか。多くの国や地域の人が集い、交流した成果を次代につなげることが大切だ」と書き出したのは読売だ。一般の来場者は2500万人を突破。「未来の技術や多様な文化に直接触れ、魅力を五感で感じる楽しさがあった」といい、「戦争や平和への考えを深める機会となった意義も大きい」と評価した。

 産経もSNSなどを通じた情報発信の広がりが「独特の一体感を生み出し、来場者が主役となった万博だった。開幕前の低調に終わるとの予想を覆して活況を呈したことは、成功といってよいだろう」と総括した。実際、万博協会が来場者に聞いた満足度調査では、75%近くが肯定的な回答をしていた。

 新潟も「運営側の吉村洋文大阪府知事が『合格点』としたのは、一定程度理解できる」と前向きにとらえた。中国は「何より、『多様でありながら、ひとつ』という理念が込められた大屋根リングの内側に、戦火にある国も含め、一堂に会した意義は大きい」と強調した。

 個々の展示では、1周約2キロの「大屋根リング」をはじめ、「iPS心臓」や「空飛ぶクルマ」など最先端の科学技術が話題となり、公式キャラクターの「ミャクミャク」も人気を博した。イタリア館のミケランジェロの彫刻や、戦時下の暮らしを伝えるウクライナ館の動画など、注目の海外展示も多かった。

 「企業活動でもイノベーションの芽を生むような協業の動きが各所でみられた」とビジネス面に着目したのは日経だ。「これらを生かし、関西経済の復活につなげることが、インフラ整備を含めて10兆円を投じた万博の成果をより高めることになる」と今後の展開に期待を示した。

 東奥や上毛、佐賀などは舞台裏にも目を向けた。「会場のスタッフは、子どもや高齢者を、涼しさを感じられる場所へ案内し、水分補給を助けた。来場者を猛暑から守ろうと献身的に働く姿は、『現場力』こそ博覧会を成功させる鍵であることを教えてくれた」と現場の関係者に敬意を表した。

 もちろん、厳しい評価はある。毎日は「(大阪万博は)もともとはカジノを含む統合型リゾート(IR)開発との相乗効果を期待して、日本維新の会が打ち出した計画だ。大型イベント頼みの経済活性化に懐疑的な見方は根強い」と指摘した。

 想定の1.9倍に膨らんだ建設費やパビリオン準備の遅れ、下請け業者への工事費の未払い、デジタル活用の不手際など多くの課題を挙げて「徹底した検証が必要」だと訴えた。

経済効果は限定的と指摘

 開催地以外への経済波及についても、期待外れとの見方は多い。北海道は「(会場への)一般来場者のうち海外からは6.1%にとどまり、国内の67.1%は地元の近畿地方在住だ。道内は0.5%にすぎない」と万博協会のデータを引用し、「全国的な盛り上がりは欠いた」と振り返った。

 同様の声は、大阪府の近隣からも出ている。神戸は「万博誘致の目的の一つは関西経済の浮揚だった」としつつ、地元兵庫県の「城崎温泉や姫路城の客足は期待ほど伸びていない。(中略)県内への波及は限られる」と嘆いた。

 京都も「万博会場にお金が落ちる分、その他の支出が減らされている可能性がある」との専門家の見方を紹介し、期待された京滋を含む関西経済への波及効果は限られたとした。

 万博後のあり方を巡っては、「万博は子どもたちや若者を未来に導く水先案内人の役割を果たしたのだろうか」(山形、山梨日日など)といったレガシー(遺産)の検証や、跡地利用の問題を重視する社説が多かった。

 とりわけ会場の隣接地で建設が進むIR施設について「カジノを核とした開発が、『いのち輝く未来社会』をテーマにした万博の地にふさわしいのか。再考すべきではないか」(信濃毎日)などと疑問視する声が目立った。

 朝日は多額の公費が投入される万博の意義について、「55年前の大阪万博を含め、もっぱら地域の開発と国の発展のてこに使われてきた万博を成熟した先進国が開く意味は何か。引き続き問われていく」と指摘した。日本での「次の万博」の可能性も含め、検討すべき課題は多い。(審査室)

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