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2026年 1月13日
海図なき時代 変革訴える 在京6紙の新年号紙面
AI、外国人にも焦点
新年早々、米国によるベネズエラ攻撃が世界を驚愕させた。トランプ米大統領は、豊富な石油資源に対する意欲を隠さず、先行きは見通せない。世界秩序は揺らぎ、日本の同盟国・米国はその中心にいると言っても過言ではない状況だ。在京6紙の元日付紙面には海図なき時代を反映した記事が並んだ。1面トップは毎日、読売が独自ニュース。産経と東京が外国人問題、朝日と日経は人工知能(AI)をそれぞれ取り上げた。社説・論説は、分断の危機を指摘するとともに、変革のきっかけにしようと呼び掛ける内容が目立った。
岩手日報は「排除から共生へ。近年、障害者観は前向きに変化してきた」と述べ、「静けさの中の豊かさが、私たちにさまざまな気づきをもたらす」と説いた。南日本は「聞こえる人と聞こえない人との間にある壁を取り除くきっかけとなってほしい」と期待を寄せる。北海道は「大会は手話の普及を促進するなど社会的意義が大きい」とし、「重要なのは一過性で終わらせず、誰もが住みやすい社会を追求し続けていくことである」と強調した。
独自ニュースは2紙
【1面トップ】毎日「ロッキード5億円『配布先』入手 74年参院選候補26人 田中元首相の元秘書官作成」=田中角栄元首相が逮捕されたロッキード事件で、大手商社丸紅ルートの5億円に上る賄賂の「使途」に関し、榎本敏夫元首相秘書官が東京地検特捜部の取り調べに対して作成した一覧表を入手したと報じた。検察内でも「門外不出」とされた新資料で、1974年(昭和49年)の参院選と参院補選で現金を配布したとされる候補者の氏名と時期、金額などが記されているとした。
読売「中国、台湾上陸訓練か 桟橋搭載の船団複数展開 民間大型貨物船も参加」=中国軍が、大型の移動式桟橋を搭載した船団を複数展開し、上陸訓練とみられる演習を実施していることが判明したと伝えた。入手した人工衛星画像と公開されている船舶情報の分析、日本政府関係者への取材で分かったと説明。船団は折り畳み可能な桟橋を搭載した船3隻で構成され全長約800メートルの桟橋を連結してかける仕組みだ。日米両政府は、中国軍が台湾侵攻能力を高めているとみて、警戒を強めているという。
産経「外国人『地域に影響』70% 全1741市区町村長アンケート 存在不可欠54%」=70%が外国人急増に伴い地域に影響があると回答し、そのうち76%が良い・悪い影響の「両方ある」とした。アンケートは昨年11~12月に実施し回答率は82.3%。良い影響は「人手不足の解消」が845自治体で最も多く、「悪い影響」では「文化・習慣上の摩擦」が最多の515だった。対応施策については、多くの自治体が多言語対応の整備や日本語教育支援といった「住民との共生推進」を重視していた。
東京「東京変貌 転売のリアル① 『物件当たった』即売り出し 中国SNSで億ション広告」=マンション価格の高騰で投機的な転売規制を求める声が高まっているとして、東京のマンション転売の実態に迫る企画の1回目。千代田区の担当者が昨年5月、不動産登記からマンションの居住実態を調べたところ、所有者の住所が物件の所在地と異なるケースが相次いだ。匿名の情報提供を端緒に、建設中にもかかわらず中国の交流サイト(SNS)に転売の広告が出された千代田区内の高級マンションのケースに迫った。
朝日「AIの時代 何を託すのか あなたは人間ですか AIではない証明 虹彩を見極める『目玉』」=AIが情報空間で人間と見分けがつかなくなる時代を取り上げた特集記事。目の虹彩データを使い、人間だと証明する試みがあり、虹彩を読み取る「オーブ」と呼ばれる端末が世界で最も多く設置されているのは日本だと紹介している。ただ、データの扱いへの警戒感は強く、ドイツは欧州連合(EU)の個人情報保護規則に違反するとして虹彩コードの削除を命令したという。
日経「α 20億人の未来① 頂を創れ 分断・格差 突破託す」=主に16歳以下でZ世代の次に当たるα世代に着目し難題解決を考える企画の1回目。この世代は日本に約1400万人おり、幼少期からAIが普及している。あと数年で巨大な市場を形成する世代であり、この世代に的を絞った体質変化を模索している大手企業の取り組みを紹介。取材班は世界でα世代を取材、若者と壁に挑み、ともに一歩を踏み出すことが新しい世界づくりの始まりになるとしている。
平和に向け国際世論作り主導を
【社説・論説】朝日「退潮する民主主義 『分断の罠』に陥らぬよう」=民主主義の価値を問うた。「市民が個人として尊重され、その自由と平等を根底に置いている」ことが強みだとし、熟議に時間はかかるものの誤りを改める「修正力」があると強調。政府批判を権力が封殺するため、修正できない独裁政治と対比した。ただ「分断が深まれば、相手を敵視して憎悪を生み、やがて権威主義的な色彩を強めてゆく」と警告し「対話を通じて妥協点とつながりを見いだしていく」という民主主義の理念と強みを訴えた。
毎日「海図なき世界 『ポスト真実』超えて 未来を描き社会を変える」=雇用の不安定化や格差、貧困などが深刻化する現代社会で「多党化した議会は、目先の利益ばかり追求するポピュリズムに傾斜する。複雑な問題に長期的な視座で対処する力を失いつつある」と指摘。数十年後に生きる「将来人」の視点で今を考える「フューチャーデザイン」を提案し、同時代の人々の問題意識を共有して将来世代にも「拡張」する試みが、社会の持続性を保つ力になると結論付けた。
読売「知力、体力、発信力を高めたい 世界秩序の受益者から形成者に」=「世界の平和と安定を維持するため、新しい秩序の形成に向けて国際世論作りを主導する出発点としなければならない」と強調し、そのために知力(構想力)、体力(経済力・技術力)、発信力が問われると断言。トランプ氏の言動には帝国主義的な危うさを感じるとして、日米同盟の維持、強化の重要性を前提に、日本が戦後の世界の平和と安定に貢献してきた実績を国際社会に発信し続ける外交が肝要だと呼び掛けた。
日経「混迷を好機にする行動の1年に」=2026年を「戦後80年の間に確立したルールや枠組みが至るところでほころび、世界も日本も新たな秩序を手探りする『海図なき時代』を迎えた」と位置付け「ピンチをチャンスに変える起点にしなければならない」と強調し、経済の成長力を手始めに「日本の国力を内と外の両方向で高めなければならない」とした。その上で高市政権に対し、米中など大国主導で一方的な国際秩序が作られないよう「同志国との協調の先頭にたつべきだ」と結論付けた。
産経「年のはじめに 主張特別編 『台湾有事の前年』にしないために」=27年末までに中国は台湾における戦争に勝利できると見込んでいるとの米国防総省の分析を示し、中国が尖閣諸島を「台湾省」の付属島嶼としていることは、台湾有事を傍観できない理由の一つだと主張した。その上で「抑止力と対処力の向上へ必要な措置は、拙速でも構わずに実行しなければならない」と訴え、具体的には早急なインテリジェンス機能強化を挙げた。
東京「『怒』を『恕』に変える 年のはじめに考える」=日中関係の悪化について双方の国民感情が「SNSなどを通じ、互いへの反発が激化しないかと懸念」しているとし、怒りを憎悪に変容させることは避けなければならないと注意喚起した。日本の書家の母娘が、母親はどんなに怒っていても娘から「恕」と言われたらニコッとしなければならないと約束したエピソードを紹介。一人一人がほんの少し冷静になって「怒」を「恕」に変えるところから、すべては始まるのかもしれないと結んだ。
【主な連載企画】1面トップで始まった朝日「AIの時代」、日経「α 20億人の未来」のほか、以下など。朝日=経済面「シン・経済圏」、国際面「やっぱりうちが好き」、くらし面「『共生』を考える」、毎日=1面「テラクライシス」(1月3日1面トップから)、社会面「再起 私の道 能登~東日本~熊本」(12月31日から)、読売=1面「共生のかたち」(1月3日1面トップから)、くらし家庭面「つながるキモチ」、東京=暮らし面「ウマい暮らし方」、産経=1面「日本を守れるか」(1月4日1面から)
【元日号ページ数(かっこ内の数字は25年、24年の順)】 朝日82(90、88)▽毎日52(56、60)▽読売88(88、88)▽日経92(88、92)▽東京38(40、42)▽産経60(60、64)(審査室)



