- トップページ
- 新聞協会報・紙面モニターから
- 「大義見えぬ」批判相次ぐ 異例の衆院解散・総選挙
2026年 2月10日
「大義見えぬ」批判相次ぐ 異例の衆院解散・総選挙
責任果たす政党の見極め必要
衆院選が2月8日投開票された。前回の衆院選から1年4か月、任期4年の折り返しにも達していない中での解散であり、投開票までは戦後最短の16日間だった。異例ともいえる解散・総選挙を各紙はどう論じたか。高市早苗首相が解散を表明した1月19日の記者会見と23日の解散、27日の公示を巡る各社の社説・論説を取り上げる。
政権基盤強化の思惑指摘
解散表明を巡っては、大義を問う社説・論説が目立った。朝日は「納得できる説明とは言えない。国民生活より自らの権力基盤の強化を優先した『自分ファースト解散』というほかない」と論じ、中日・東京は「物価高対策を最優先課題に掲げながら、2026年度予算案の本年度内の成立を断念してまで、なぜ国民に信を問う必要があるのか、納得できる説明はなかった。大義を欠く権力乱用と断じざるを得ない」と主張した。岩手日報、京都、神戸、中国、徳島、西日本なども、大義が見えないなどと論じた。陸奥は「高い支持率で推移している今のうちに自身の政権基盤を強化したいとの首相の思惑が見え隠れしてならない」と指摘しつつ、「大事なのは国民の暮らしであり、どの政党・団体が国民の側を向いているのかよく吟味して選挙に臨みたい」と呼び掛けた。
憲法7条による解散に言及した社もあった。高知は「解散権の恣意(しい)的な行使について再考する必要がある」とした。山梨日日は「今衆院選では、7条解散の在り方についても各党が考えを示し、国民に問うべきだろう」と主張した。
静岡は「衆院選が各党による減税のアピール合戦になってはならない。減税を訴えるなら、裏付けとなる財源の議論が不可欠だ」とクギを刺した。福島民友は「各党が公約を十分に精査することなく選挙戦に突入してしまって、将来世代に責任を持てる政治を実現できるのだろうか」と疑問を投げ掛けた。
新潟は「会見で『政治とカネ』の問題に一切言及しなかったことは、国民への誠実さを欠いている」と指摘。スパイ防止法制定や国家情報局、対日外国投資委員会の設置に触れて、「いずれも首相が言うように、国の在り方を大きく変える重要な問題である。選挙結果で是非を決するのではなく、国会で慎重に議論を重ねる必要があるはずだ」と求めた。
一方、産経は「審判を仰ぐ意義は大きい」と解散表明を評価し、「高市新首相の登板と自民、日本維新の会の新しい連立が生まれた以上、首相が解散総選挙で国民の信を問い、政策推進力を得ようとするのは当然だ」と主張した。読売は「政権基盤を安定させて物価高対策や防衛力の強化策を進めたい、という高市首相の思いが伝わる解散宣言である」「首相は、政権選択選挙で民意を得て、内政、外交の課題に腰を据えて取り組みたいのだろう」と、理解を示した。
中長期視点での選択重要
衆院解散と公示にあたっては、論戦と熟慮を望む社説・論説が多かった。毎日は「責任ある政党見極める時」と題し、「選挙結果は今後の日本を大きく左右する。交流サイト(SNS)などのムードに流されず、中長期の視点も踏まえて冷静に見極める必要がある。『ベスト』の選択肢が見つからなければ熟慮のうえで『ベター』を選び、1票を投じたい」と主張した。日経は「外にあっては国際秩序が動揺し、内をみれば財政の持続性に警鐘が鳴るなかでの選挙戦である。岐路にある我が国の将来に危機感を持ち、中長期の視点に立って国の針路を誤らぬ選択をしなければならない」と呼び掛けた。秋田魁は「政治が人気取りの政策ばかりを競えば財政は不安定化する。財政規律や将来世代に対しても本気で責任を果たそうとしているのか、各党の考えを見極めなければならない」と指摘した。
争点が不明確なことも特徴だった。河北は「消去法的に探すなら、高市早苗首相の政権運営に対する評価以外に大きな争点は見当たらないのではないか」としたうえで、「強固な信任をてこに大胆な政策に挑みたいという意欲は否定しないものの、視線の先にあるのは旧姓の通称使用法制化やスパイ防止法、外国人規制など、より『タカ派』色が強まる政策テーマだ」と論じた。熊本日日は「選挙の結果、勢力図がどう塗り替わるか見通せない部分がある。当然ながら鍵を握るのは私たちが投じる票だ。それぞれの訴えが本当に実現可能な政策かどうか。選挙戦を通じて、しっかり吟味したい」と結んだ。
地方の負担を巡り、愛媛は「投票所入場整理券の発送が期日前投票開始に間に合わないという自治体も相次ぐ」と指摘。山陽は「地方活性化も重要な争点だ。東京一極集中に歯止めがかからず、人口流出が加速する地方の疲弊は深刻である。石破茂前政権時代と比べ、地方施策への注力度が下がった感は否めない。実効性ある論議を求めたい」と訴えた。(審査室)



