8月30日付 市井の人々の営み描く

中日「人情交差点」

 歓楽街のホルモン焼き屋、古い喫茶店を改築した民宿兼食堂などを舞台に、市井の人間模様を描く。1話あたり5回連載のシリーズ企画。今年1月から市民版、なごや東版に掲載している。

 街の人たちの小さな営みを伝えることを主眼に置く。社会部の境田未緒デスクは、読者の心をくすぐる「温かみ」が連載の狙いだと話す。

 取材は30歳前後の若手記者が担当。境田デスクは「記者にも、自分が担当する地域を好きになってほしい」との思いで送り出した。地域の実情を深く知ることは、今後の取材でも大きな糧になるからだ。

 8月9~14日まで市民版で掲載した第8話では、ミニシアターの先駆けとなった「名古屋シネマテーク」(名古屋市千種区)の支配人らを取り上げた。デジタル化で多くの映画館が映写機を廃棄する中、フィルム映画の上映を続けている。

 光の陰影や細かな粒子が入り込んだフィルム特有の質感が、映画の大きな魅力だと信じているからだ。映写機がなくなれば、現存するフィルム作品が観客の目に触れる機会は失われる。上映環境を守るため、シネマテークは2015年、近年修復されたフィルム作品の上映会を開いた。

 目玉は、1927年の無声映画「忠次旅日記」(伊藤大輔監督)。不朽の名作といわれながら散逸し、幻の作品となっていた。90年近く前の名優の姿を生き生きと再生するフィルムの力に確かな手応えを得て、支配人はフィルム映画の守護者として闘い続ける。

 取材した市川泰之記者は、時代の波にあらがいいながら映画と向き合う支配人の姿に、心を動かされたと振り返る。

 劇場でスクリーンと向き合う体験の価値も再認識したという。「映画館を出た後、お酒を飲みながら感想を語り合える環境がこの街にはある。小さいながらもここには『文化圏』が残っている」と語った。(斎)

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