2016年 9月13日
故郷での終末期の支えは

南日本「かごしま 老いの明日」

 鹿児島県は65歳以上の層が人口の3割に近い。元日付から始まった連載は、高齢者が日々の暮らしで直面する困難、支援する子供世代の苦悩を追ってきた。

 8月22日付から9月13日付までの第5部は「望む場所で最期を迎える」がテーマ。残された時間を自宅で過ごしたいと望む人々と、支援する自治体の取り組みを紹介した。

 屋久島の南に位置する十島村には、宝島や中之島など南北約160キロに七つの有人島が点在する。医療機関や介護サービスはほとんど整備されていない。手厚いケアが望めない中で、本人や家族が納得できる旅立ちをどう支援するか。川口智子報道部副部長は「これから全国に広がる限界集落にも共通する課題だ」と語る。

 2011年、93歳の女性が宝島の自宅で亡くなった。巡回診療の医師の診断がしばらく受けられず、死因が分からない「異状死」として、警察による検視の対象となった。検視が終わるまで、家族ですら遺体に触れることができなかった。

 十島村は後の検証で、検視は必要なかったと結論付けた。これを踏まえて13年3月、みとりに関する相談先、確認事項などを記したマニュアルを策定した。

 今年1月には、中之島で66歳の男性が亡くなる。男性は15年4月に余命を宣告され、終末期を故郷で過ごすことを決めた。村は島の診療所に常駐する看護師に加え、応援の看護師も定期的に派遣する。ほぼ毎日、男性の自宅を訪れて容態を確認した。

 宝島で取材した中咲貴稔記者は、島民の故郷への愛情の深さが忘れられないと振り返る。本人の希望を叶えるには、支援の輪と周囲の理解が欠かせない。「死をタブー視せず、本人と家族がともに考えるきっかけにしてほしい」と語った。 (梛)

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