4月 5日付 人の復興 再生の起点に

廃炉作業の確実な前進を

 東日本大震災から5年の節目を迎えた。これまでの5年間は「集中復興期間」として、被災地のインフラ復旧や住宅再建が進められてきたが、復興への歩みは順調とは言えず、東京電力福島第一原子力発電所事故の影響もあり、今も17万人以上が避難生活を送っている。今年も3月11日にはほぼすべての新聞社が社説に取り上げた。その前後に複数回、掲載した社も多かったが、ここでは11日付の各紙の社説を取り上げる。

事業の再点検も必要

 被災地の地元紙から。「急激な人口減と高齢化にさらされている被災地の現実は厳しい」と見据えた東奥は「国は被災地に一層寄り添い、きめ細かい支援に取り組まなければならない。また、社会全体でできることは何か常に考え続けていきたい」と問い掛けた。デーリー東北は「復興予算頼みから、小規模でも特色を備え、地域の雇用にもつながるような起業を支え、育てる発想への転換が必要だ」と問題提起した。

 岩手日報は「復興の限界感が語られている。それは行政主導の限界でもある」とした上で、「民間の『出る杭(くい)』を伸ばし、支える仕組みと雰囲気をつくる。さらに外からの刺激を加えて化学反応を起こす。そこに限界の突破口があるのではないか」と民間主導を提唱した。河北は「地域活性化は主役を担う住民が元気を取り戻してこそ。暮らしの再建に軸足を移し、再生の起点として人の復興を支える仕組みの充実に努めたい」と訴えた。

 阪神大震災と比較して論じたのは神戸で、「阪神・淡路では当時の被災10市10町の推計人口が7年弱で震災前を上回った。人口回復は復興のバロメーターと見られた。その意味で人口減に苦しむ東日本の被災地は、従来の形での復興が難しくなっている」と指摘した。京都も「仮設住宅に現在も3県で約5万7千人が暮らし、発生から5年で入居者がゼロになった阪神大震災との違いが際立っている」として、「被災者の生活再建を正面に据えた『人の復興』を加速せねばなるまい」と警鐘を鳴らした。

 政府は今後5年間を「復興・創生期間」と位置付け、復興を加速化させる方針だ。読売は「新年度からは事業費の一部を自治体が負担する。事業の成果が従来以上に問われよう。効果を見極め、優先度の高い順に財源を配分する姿勢が求められる。既に始まった事業の再点検も進めたい」と論じた。産経は「震災で浮かび上がったのは、日本社会のひずみである。被災地がその解決策を模索することにも、復興プロセスの意義はある。先進的な取り組みを、日本の社会全体が後追いする日もいずれ来るだろう」と強調した。

原発の安全性高めよ

 福島第一原発事故の影響は今も深刻だ。福島民友は「原発事故を完全に収束させ、廃炉作業を安定的に進めることが本県復興の大前提だ。そのためには凍土遮水壁など汚染水対策をしっかり機能させ、本格的な廃炉作業へと確実に前進させなければならない。政府と東電にはその責任を全うするよう重ねて求めたい」と注文した。福島民報は「原発事故で県民の誇りはずたずたにされた。一時は『福島県出身』と言えない雰囲気が国内の一部にあった。諦めない気持ち、地道な努力で、誇りを取り戻しつつある。これから必要なことは、原発事故前よりも強い誇りを持つことだ」と決意を込めた。

 地元に原発がある北國は「『負の遺産』の後始末は容易ではないが、日本の英知と技術力でその壁は突破できよう。そのための技術開発は、今後の廃炉時代に向けて、新たな成長産業の灯にもなり得る」と捉えた。毎日は「原子力災害による被害を真っ正面から見据えた年次の『福島白書』の作成に国を挙げて取り組むべき時ではないか」と提言。日経は「福島の事故を絶えず問い直し、原発の安全性を高めると同時に、原発のありようも含めたエネルギー利用の長期展望を日本は示していかなくてはならない」と主張した。

記憶の風化避けたい

 静岡「5年を迎えて懸念されるのは記憶の風化だ」、北海道「何より、震災の記憶を風化させないよう心がけたい」、南日本「震災や原発事故を風化させてはならない。悩みと希望を共有することが東北の願いだろう」など、風化を戒める論調も目立った。朝日は「時がたてば、被災地とほかの間に意識の違いが生じるのは仕方のないことでもある。だが、災害に強い社会を築くには、その溝を埋める不断の努力が欠かせない」と説いた。中日・東京は「心構えに必要な教訓は歴史の中から、五年前のつらい経験の中からいくつでも見つけ出すことができるはずである。何が起きうるのか。史実を謙虚に見詰め、その日に備えよう」と呼び掛けた。(審査室)

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